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第4話:拮抗したまま立つ ——姿勢は「作るもの」ではなく、「成立してしまう状態」

第4話:拮抗したまま立つ ——姿勢は「作るもの」ではなく、「成立してしまう状態」

「いい姿勢を作りましょう」

「もっと胸を張って」

「背筋を真っ直ぐに伸ばして」

子どもの頃から、私たちはこうした言葉をかけられ続けてきました。

しかし、トレーニングの現場で多くの方の身体を観察していると、この「いい姿勢を作ろうとする努力」こそが、身体を最も壊しやすい原因になっていることに気づかされます。

 

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・胸を無理やり張る。

・肩甲骨を力任せに寄せる。

・背中を反らせて伸ばす。

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これらはすべて、身体のパーツを部分的に“操作”しようとする不自然な行為です。

本当に自然に、美しく立っている人の身体を観察してみてください。彼らは、自分の身体を力で操作している様子は微塵も見せません。

 

【ただ、そこに立っている】

重力の中に、静かに存在している。それだけです。『造作』がない。

 

■ 拮抗(Antagonism)とは、「勝っていない状態」

前回の第3話で、「張力(Tension)」についてお話ししました。

弦を引き絞った弓のように、内側にエネルギーが満ちている状態です。この張力が身体の前後左右でバランスを取ることを、専門用語で**「拮抗(Antagonism)」**と呼びます。

「拮抗」という言葉を聞くと、力と力が激しくぶつかり合い、押し合っているような「対立」のイメージを持たれるかもしれません。

しかし、実際の身体における正しい拮抗は違います。

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  • 前側の筋肉が勝っていない。
  • 後ろ側の筋肉も勝っていない。
  • 上へ引っ張る力も、下へ引っ張る力も、どちらも行き過ぎていない。

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つまり、どのパーツも「自分だけが主張しすぎていない状態」。

0(ゼロ)の地点で、すべての力が静かに相殺されている状態。これこそが、真の拮抗です。

■ 背骨は「一本の棒」ではない

姿勢を良くしようとする人が陥る最大の罠は、背骨(Spine)を「一本の硬い棒」のように扱ってしまうことです。

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真っ直ぐに、定して。

絶対にブレないように。

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しかし、実際の背骨は、24個の細かな骨(椎骨)が積み重なった、極めて精密な関節の集合体です。一本の棒として体重を支えるのではなく、力を分散させ、しなりながら拮抗する「サスペンション構造」を持っています。

ここで、身体を正しく拮抗させるための最も重要な鍵となるのが、

**「胸椎の伸展(Thoracic extension)」**です。

 

■ なぜ「胸椎(きょうつい)」が鍵なのか

胸椎とは、背骨のうち、ちょうど胸の裏側(肋骨がついている部分)にある12個の骨のことです。

姿勢を良くしようとして、腰の骨(腰椎)を無理に伸ばすと、お腹の力が抜けて「反り腰」になり、腰痛を引き起こします。

首の骨(頸椎)を無理に立てようとすると、顎が不自然に上がり、首こりの原因になります。

しかし、この「胸椎」が自然にスッと伸びる(伸展する)と、不思議なことが起きます。その上下にあるパーツが、勝手に整うのです。

 

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  • 持ち上がっていた肩が、ストンと落ちる。
  • 前に突き出ていた首が、胴体の上にスライドして乗る。
  • 過剰に反っていた腰の負担が消える。

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操作するポイントが一段内側(胸椎)に入ることで、みぞおち辺りの皮膚に、薄くピンと張るような感覚が生まれます。

それが、あなたの身体の中に眠っていた「弓の弦」が張られたサインです。

 

立つとは、重力に「耐える」ことではない

 

弓は、弦だけが強く張られていても機能しません。

逆に、木の棒の部分だけが硬くても、矢は飛びません。

前後の張力が、均等に引き合っている(拮抗している)とき、初めて道具として成立します。

人体も全く同じです。

腹部(前)の力が勝ちすぎると、背中が丸まり猫背になる。

背部(後ろ)の力が勝ちすぎると、腰が反って痛める。

どちらも正解ではありません。

 

「張っているが、どこにも過剰な力みが出ていない」

 

この拮抗状態こそが、人間が二足歩行を行うための本来のスタートラインです。

拮抗して立っている人は、脚の力で踏ん張っていません。

上から降ってくる重力(Gravity)を、筋肉で押し返してもいません。

ただ、重力をしなやかに受け取り、足の裏から地球(接地面)へと流しているだけです。

結果として、何時間立っても疲れにくく、いつでも次の動作へ移れる(動き出しが速い)状態になります。これは「筋肉の鍛錬」というよりも、身体の「前提条件の整理」なのです。

 

順番を間違えると、身体は分断される

身体の張力が整う前に、ただ「良い姿勢で立とう」と目標を掲げるとどうなるか。

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  • どこかの筋肉で頑張る。
  • どこかの関節を固める。
  • 結果的に、どこかが犠牲になる。

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 一見、外からは姿勢が良く見えても、内側ではパーツ同士が分断され、争いが起きています。だから、順番が逆なのです。

第2話でやったように、まずは丸まって**「戻る」。

第3話のように、内圧を高めて「張る」。

そして今回のように、前後上下の力を「拮抗させる」**。

そのプロセスを辿れば、姿勢は作るものではなく、

 

気づいたら、美しく立っている

という結果に変わります。

 

■ 次回予告:重力と交渉する技術

さて、拮抗したまま立つことができた私たちの身体。

次回は、この状態をどうやって維持し、さらに質の高い動きへと変換していくのか。

キーワードは、ピラティスの真髄とも言える**「エロンゲーション(Elongation)」。

そして、それを私が日本語で独自に解釈した「離角(りかく)」**という概念です。

上へ行こうとする力と、地を捨てない感覚。

重力と敵対するのではなく、重力と「交渉」する究極の技術の核心に入っていきます。

 

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高山市にあるスポーツクラブ「ing」では【健康】を意識しています。

単に筋肉を鍛えるだけでなく、今回のブログ内容でもありましたが「身体の再構築」をテーマにしたピラティスや身体操作・筋力トレーニング、ダイエットへのアプローチなどの指導を行っています。

あなたの身体の中に眠る「タレント(才能)」・「張力」・インナーマッスル(腣)さえも、意識しながら一度、丸くなる動作から張る感覚・力みのない時間を得て、一緒に体の感覚を呼び覚ましましょう。

 

セッションの体験のご予約、お問い合わせ等お待ちしております。

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