
blog スタッフブログ
長編ブログ【腣】 第2話: 「なぜ私たちは、一度「丸まる」必要があるのか」 ——「立つ」前に不可欠な、戦略的リセット(Strategic Reset)
姿勢を良くしよう。
背筋をピンと伸ばそう。
胸を張って生きよう。
こうした言葉は、私たちが子どもの頃から、耳にタコができるほど聞かされてきたものです。
しかし、実際の現場で身体を見ていると、ある残酷な矛盾(Contradiction)に気づきます。
「伸ばそう」「張ろう」と努力すればするほど、
腰や肩が悲鳴を上げ、呼吸が浅くなり、結果的に姿勢が崩れていく人が後を絶たないのです。
前回、身体の中心にはすべてを統率する「帝(テイ)」【腣】が必要だとお話ししました。
不調を抱える多くの人は、その帝が不在のまま、外側の筋肉だけで無理やり「良い姿勢という形」を真似しようとしています。
それは例えるなら、基礎工事が終わっていない土地に、無理やり柱を立てようとしているようなもの。
立つための「準備」が整っていない状態で、私たちは無理やり立ち続けているのです。
⸻
■ 人は最初から「立つ存在」ではない
少し時間を巻き戻しましょう。
私たちは、生まれた瞬間から立って歩いていたわけではありません。
母体の中にいた胎児(Fetus)の頃。
私たちの身体は丸く、羊水の中で重力(Gravity)の影響をほとんど受けず、外界のストレスと戦う必要もありませんでした。
そこでは、
* 腰で体重を支える必要も
* 肩で踏ん張る必要も
* 無理に姿勢を保つ必要もありません。
ただ「そこに在る」だけで、身体のシステムは完璧に成立していました。
つまり、人間の身体の設計図は、伸びた状態ではなく**「丸い状態(Flexion)」**からスタートしているのです。
⸻
■ 現場で観察される、現代人の「伸びきったバグ」
私が日々、ジムのフロアで多くの方の動きを観察していて強く感じるのは、現代人は「力の抜き方」を忘れてしまったという事実です。
不調を抱えた方は、無意識のうちにこう考えています。
「もっと筋肉を鍛えなきゃ(More strength)」
「もっと真っ直ぐにしなきゃ(More straight)」
しかし、私がセッションで最初にお願いするのは、逆のアプローチです。
「一度、完全に丸くなって戻れますか?」
ちなみに、ここで言う「戻る」は、ただダラっと横になることや、非効率な姿勢で立つことではありません。
まずは赤ん坊のように、背骨のカーブを丸く保ち、身体の内側に圧を閉じ込めることができるかどうかの確認・調整・認知能力を我々は見ています。
驚くべきことに、多くの大人は「丸まること」ができません。
背中が板のように固まり、息が詰まり、どうしてもどこかが反ってしまう。
常に「戦うモード」に入りっぱなしで、システムの初期化ができなくなっているのです。
⸻
■ 「丸まる」= 逃げ、という誤解
なぜ、私たちは丸まれなくなったのか。
それは現代社会の構造(Structure)そのものに原因があります。
今の社会は、
* すぐに結果を出すこと
* 常に前を向いて進むこと
* 周囲の期待に応えること
を強く求めます。これは非常に「村」的な、群れ社会における同調のルールとも言えます。
そんな空気の中では、「丸まる」「休む」「戻る」という行程は、
「サボり」「甘え」「退行」といったネガティブな言葉に変換されてしまいます。テストの点数が悪ければ即座に次の目標を立てさせられ、数値が落ちれば「もっと頑張れ」と背中を叩かれる。
この環境に適応しようと過剰適応した結果、人は「丸まるための余白」を削り落とし、常に背中を反らせて過緊張状態で生きるようになりました。
⸻
■ 胎児のポーズが持つ、圧倒的な情報量
ヨガやピラティスには、膝を抱えて背中を丸める「胎児のポーズ(Child’s pose)」や「Cカーブ」と呼ばれる動きがあります。
一見すると地味で、運動強度が低く、ただ休んでいるだけに見えるかもしれません。
しかし、あの丸まった姿勢の内部では、極めて高度な再構築(Reconstruction)が行われています。
* 重力に対して過緊張を起こしていた背面の筋肉がオフになる。
* 浅くなっていた呼吸が、背中側の肋骨を広げるように深く入る。
* 逃げていた腹圧(Intra-abdominal pressure)が中心に集まり、内臓が正しい位置に収まる。
これは単なるリラクゼーションではありません。
散り散りになっていた身体のパーツを、再び「中心(帝)」の元へと集め直す、精密なチューニング作業なのです。
⸻
■ 止まるためではなく、次に「飛ぶ」ために
誤解しないでいただきたいのは、「ずっと丸まっていればいい」と
言っているわけではありません。
本来の正しい「丸まる」は、止まるためのものではなく、次に立ち上がり、強烈な出力を生み出すための絶対的な準備です。
弓道(Archery)で言えば、矢を遠くへ飛ばすために、一度弦をギリギリまで引き絞り、力を蓄積する状態(Loading)。
車で言えば、前に進む前に一度クラッチを踏み込み、ギアをニュートラルに戻す工程。
張るためには、一度引き取る必要がある。
伸びるためには、一度縮む必要がある。
皮肉なことに、躊躇なくしっかりと「丸まれる人」ほど、その後の立ち上がりやパフォーマンスの発揮は驚くほど軽やかです。腰だけで支えず、肩で踏ん張らず、中心から手足を自由に使うことができるようになります。
なぜなら、丸まることで「身体の起点(ゼロポイント)」を確実に取り戻しているからです。
⸻
■ 次回予告:張力(Tension)という才能
中心(帝)「腣」を取り戻すために、一度「丸まる」。
これができたら、いよいよ私たちは「立つ」フェーズへと移行します。
しかし、それは筋肉で無理やり身体を持ち上げるのとは違います。
次回は、丸まった状態からどのようにして**「拮抗(Antagonism)したまま立つ」**のか。
弓、背骨、そして重力。
「エロンゲーション(離角)」という、身体を上下に引き合う**「張力(Tension)」**の謎について、もう一段深い構造(Structure)へと潜っていきます。
ご自身の身体が今「反りっぱなし」なのか、「丸まれる」のか。
ぜひ一度、ご自宅の床で膝を抱えて、自分自身の身体を観察してみてください。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
高山市にあるスポーツクラブ「ing」では【健康】を意識しています。
単に筋肉を鍛えるだけでなく、今回のブログ内容でもありましたが「身体の再構築」をテーマにしたピラティスやトレーニング、ダイエットへのアプローチなどの指導を行っています。
あなたの身体の中に眠る「帝」・【腣(テイ)】を、意識しながら一度、丸くなり一緒に体の感覚を呼び覚ましましょう。
体験のご予約、お問い合わせ等お待ちしております。
住所
〒506-0052
岐阜県高山市下岡本町1357-1
TEL
057-757-8580
営業時間
10:00~21:00
定休日
不定休



